『赤毛のアン』の原書、『Anne of Green Gables』をマイペースに読み進めています。
9章、10章はマリラが「母親」になっていく葛藤や喜びが丁寧に描かれていて、とても興味深く読みました。
以下は自分なりの勝手な感想です。
アンがリンド夫人との初対面でやらかしたとき。
マリラはアンの非を認めつつもアンを庇い、同時に養育者として至らなかった自分を恥じる。
これってまさに母親が持つ感情です。
アンが部屋から出てこない理由をマシュウに説明する時は、罰を与える正当性を理解させるためにあえてアンの粗相を強調する。
わかるなあ~マリラの気持ち。
事の次第をすべて知っているわけでもなく、甘やかすばかりの夫(マリラの場合は兄)に、無責任に意見してほしくないんですよね(笑)
とはいえそんな「甘い父」であるマシュウがいい仕事をして、解決に向かうわけです。
しかもマリラには内緒で実行したので、できた夫(いや兄)だと思います。
とにかくマリラにとってアンは、この時点ですでに娘同然だったのですネ。
そして第10章、最後のシーン。
リンド夫人への謝罪を無事終えて、マリラとアンが連れ立って家路につく場面がすごーく好きです。
…Far up in the shadows a cheerful light gleamed out through the trees from the kitchen at Green Gables. Anne suddenly came close to Marilla and slipped her hand into the older woman's hard palm.
~中略~
Something warm and pleasant welled up in Marilla's heart at touh of that thin little hand in her own-a throb of the maternity she had missed, perhaps.
夕やみのたちこめたはるか向こうには、木々の枝ごしに、グリン・ゲイブルズの台所の灯が楽しそうに輝いていた。アンは急にすりよってマリラの固い掌に、そっと手をすべりこませた。
その小さな手が自分の手にふれたとき、なにか、身内のあたたまるような快いものがマリラの胸にわきあがったーーたぶん、これまで味わわなかった、母性愛であろう。
(村岡花子訳)
a cheerful light gleamed out through the trees from the kitchen at Green Gables.
この情景描写が、たまらなく好きです。
まずcheerful light という表現に心惹かれます。「bright」ではなく、普通は人の明るい性格を表す「cheerful」をあえて使う。アンの言葉を借りれば、”ぞくぞく”しませんか♪
そしてこの文章からマッチ売りの少女を思い出しました。暗闇にオレンジ色に浮かび上がる灯りの点いた家って、暖かいhomeの象徴ですものね。
しかも木の隙間から漏れる光というのがこれまた、奥ゆかしくて美しい。灯りがドーンと見えるのではなく、木の幹や葉に反射して煌めいているのでしょう。
そしてマリラの戸惑い、可愛らしいですね!
a throb of the maternity
村岡さんは簡潔に「母性愛」、松本侑子さんはthrob(=躍動、動悸)も訳して「母性愛のときめき」としています。
マリラにとって生涯初めての経験、ときめいたに違いありませんね。
初めての子育ての試練に冷静に対処したマリラ、そしてナイスアシストのマシュウ。アンは愛のある温かいhomeに引き取られて、ほんとうによかった('ω')